勝虫日記

動物生理学者の覚書

推論と推測

科学とはすべて論理的に正しいものだ、と考えてないだろうか?あるいは、完全な論理的正しさを求めるものだ、と考えてないだろうか?多くの人がそう考えてしまっているように思われるが、実はそれは一面にすぎない。ただし、ここでは「論理的に正しい」とは命題論理の推論に正しく則っていることを指す。

 

科学的活動では推論ももちろん使うが、多くの部分で推論ではなく推測が占める。推論との違いは何かというと、推測は実世界からのデータ(サンプル)を使うということだ。データに基づいて、あるいは拠り所としてと言った方がよいかもしれないが、そうして自然や人間や社会のデータについて考察すること*1が、推測を中心とする科学的活動だ。有限データを入力としてある関数を構成すること(モデリング)を通して実世界を認識する活動ともいえるかもしれない。

 

ただし、推論が必要がないというわけではもちろんない。推論の世界は推測を有効にするために探求が必要で、それは主に数理科学の分野の営みで非常に大切だ。

 

昨今の人工知能ブームは世の人々の人工知能への関心を示しているが、人工知能技術の開発は計算機で人間の推測を模倣する探求に見える。人工知能が身体をもてばそれはロボットだ。そしてロボットとは実世界環境で機能する人工物である。ちなみに、ロボットを動物に入れ替えればこれは動物生理学である。実世界についてデータからの推測を通して適切に機能することを目指すのがロボティクスで、すでに適切に機能している動物を対象になぜそれが可能なのか問うのが動物生理学であるといえる。

 

推測は実データを使うと言ったが、このような観点に立てば、統計学機械学習人工知能もロボティクスも、動物生理学もひとつのつながりをもった学問となるのではないか。もちろん、すべての学問は局所座標で貼り合わされているのだが、最近、筆者には推測と推論の学としてこれらがもっともっと密接に関係しているように思われるのである。

 

*1:さらに予測、制御も含まれるだろう。