勝虫日記

動物生理学者の覚書

ランダム法則

ランダム(偶然)であることとは何であるか、考えはじめると分からない。分からないが、科学では<確率変数はランダムに値をとり、平均が矛盾なく定義できるもの>と前提をおいて話をすすめる。サイコロをふったことは誰にでもあるだろう。その経験をもとに分かったことにしよう。科学においてもっとも重要なのはデータ(事実)であるが、偶然をともなわないデータはない。

 

すべてのデータは偶然をともなって現われる。

 

つまり、サイコロのような偶然性をともなって現われる。その偶然の構造や程度が異なるだけである。背後に必然があって、それに偶然が加わって現われると考える。必然のと偶然それぞれに数学的モデルを構築して(ときにそれらを合わせて)、解析する、つまり、データ解析は、データが現われることになった背後にある必然と偶然の構造や程度を平均的に推測することである。

 

データが有限であることからその推測に完璧はない。正しい推測はない。あるのは、有効な推測、良い推測だ。有効であること、良いことはではどのように測れるか。その方法を統計学が探求していて教えてくれる。特定の観点をとることで有効な度合いを測ることができる。とくに重要な観点は、次データが出るとしたら、どのように現われるのかという観点、つまり予測の観点である。

 

偶然が予測できるようにするには、どう考えたらよいか?それには偶然を決める構造があって、ある意味で偶然も必然から現われると考えてしまう。データが特定の未知の確率分布に従って現われると考えてしまうのだ。その意味で、偶然と必然と言いながら、数学的に決まっている、と考えてしまうのだ。

 

そう、ランダムとは何か分からないがこのように決まっているのだという前提から出発して完璧でも正しくもない推測を積み重ねながら、科学は高さの分からない天に向かって少しでも高い塔をつくっていくのだ。天への距離は分からないが、どれくらい高い塔をこれまでにつくってきたのかは、科学の歴史が教えてくれる。