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シャコ・エビ日記

シャコパンチ、エビパッチン研究者の記録

制約を克服するシャコパンチのデザイン

動物の仕組みを支配する法則を考えるとき、現在の生物学はどちらかというと化学的世界が中心です。たとえば、DNAやRNA、タンパク質、酵素、酸素、水や塩などなど。一方、物理法則も当然重要です。反応、拡散速度や熱伝導の速さ、力や運動量の伝達、構造物の強さや柔らかさ、運動力学などなどがいろいろ決めてるわけす。

いずれにしても、生物学としては化学的制約と物理的制約をどのようなデザインで克服してきているか、と考えるのが面白い。

シャコパンチ研究でも、超強力パンチの打撃に耐えるウデ(付属肢)の材料化学的な側面と同時に、物理法則との関わりのほうの仕事があります。現ラボがやってきているのは主に物理のほう。外骨格のバネ、パワーを増幅するリンケージ、流体の中での高速運動で生じるキャビテーションです。

外骨格のバネといいましたが、あのパンチの速さは、筋肉が出せる速度を超えています。どうやっているかというと、弓やアーチェリーのような"バネ"を使っていると考えられます。で、「どこにそのバネがあるのか?」と質問をつくれば、それはうちのラボのMの仕事になります。有限要素法という工学的方法を使って、CTスキャンした付属肢がどこにひずみやエネルギーを蓄えているか、それがタイプの違うシャコでどのように違うか、などが中心問題。

また、バネを使うだけではなくて、テコの一種である4-bar linkageや、キャビテーションを利用した破壊力の増大は、ボスの仕事。それで、最近のラボの仕事は、「これらの仕組みがどうやって進化してきたか?」という質問に集約されます。

シャコには、タイプの違うシャコがいて、カマのようなウデを魚とか柔らかい動物をひっかけたり、つきさしたりするタイプ(スピアラー)と、貝などの殻を叩き割っているタイプ(スマッシャー)がいます。ちなみに自分はスマッシャーに今は興味をもっています。そういうふうに機能が違う(もちろん種も違う)タイプのシャコの進化については、ラボのもうひとりのポスドクのPさんが取り組んでいます。ちなみに、Pさんはこの仕事をする前は、古代魚の進化について研究していた古生物学者で、ScienceもNatureももってるやり手。Pさんはとくにスピアラーに興味をもっていて、スピアラーは進化的には古いほうで、そのメカニクスと系統分析をやっている。そして化石から得られる情報も使って進化を真剣に考えようとしてらっしゃる。

自分も進化にかんすることまで質問を将来的には広げたいところですが、まずは運動と筋肉、神経活動を計測して、彼らがどうやってそのような付属肢をコントロールしているか、どれくらいコンロトールできるか、というような基本的なところをつめていきたい。それで、シャコを調教しようとしたり、電極をつけたりしてます。かわいらしく、手に入れにくいシャコにそんなことをするのがハードではありますが、やりがいがあります。なかなか言うこと聞いてくれないですし。下の動画はけっこううまくいった方で、叩いたらエサが少量出てきてます。あと、筋肉から活動をとってます。動きはiPhoneの撮影では速くてちゃんとは見えないと思いますが、筋肉の活動のほうを見ると、叩く0.2秒くらい前から筋肉の活動がちゃんとありました。動き出す前にバネにパワーをロードしていると考えられます。