シャコ・エビ日記

シャコパンチ、エビパッチン研究者の記録

アリが働いていた

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せっせとアリがはたらいていた。のどかな日曜日、ジンパでにぎやかな理学部裏のローンにて撮った写真。ジンパをみて、ああ、のんびりしてぇなと思ったが、このアリをみて、作業に戻った。


アリがどうやってこんな共同作業をやってのけるのか、こういう社会性昆虫の挙動は興味魅かれる。個々が全体を知らなくても、全体の統制がとれているような性質は、全体が個々の総和でない性質を持つという意味で創発的性質と言ったりする。あちこちにこうした性質があるから、特に何も言ってないようだけど、多くの科学研究はこうした創発がいかにして生じるか、ということを問題にしている。


人間の社会と何か似た機構があるのではないか、と想定するのは少し行き過ぎた議論のきらいがあるが、こうしたシステムの予想もつかない性質がどうして生まれてくるのか、進化の文脈もかかわる生物学の面白いところだ。だが、日本ではこういう個々の生物のシステムを研究しているグループは少数派だ。社会をつくる昆虫を対象とした研究は面白いということをid:finalventさんが、書籍(アリはなぜ、ちゃんと働くのか(デボラ・ゴードン))の書評の中で紹介されている*1。本の引用文も含めて少々長いが引用さしていただく。

アリのコロニーについて最も不思議なことは管理不在ということである。管理担当者がいないのに機能している組織を想像することは、人間のそれとはあまりに似ていないのでとても難しい。中心的な統制機関がない。相手に、命令したり、物事をこのようにやりなさいと教えたりするアリはいない。コロニーの仕事を完成するには何をすべきか、ということに気づいている個体はいない。

 私は生物に見られるさまざまなレベルがどのように関係するかに興味を覚えてアリを研究している。生物の世界は分子から始まり、細胞、組織、個体、個体群、生態系へと階層状に構成されている。生物学における根本的な問題は、これらの異なるレベルの出来事がどうやって関係するかということである。

いわば、システム論であり、情報論であるとも言える。あるいは進化とは実際になんであったかということの探求だ。どうも日本のネットの風景では浅薄なイデオロギーをかぶせた進化論がID論バッシングして終了のようなつまらない臭気が漂っているが、進化論は本書のような詳細な生物研究において位置づけられるものであり、そう簡単なテーマではない。

[書評]アリはなぜ、ちゃんと働くのか(デボラ・ゴードン): 極東ブログ


社会性昆虫を対象とした研究は、細胞レベルから生態系レベルまでにわたる生物学研究を実質的に行うことができるという現実性に加えて*2、我々を含めた高々数種に満たない脊椎動物しか扱わないことで陥る視野狭窄を治療し、我々の世界観を転換する可能性を持っていると思われる。

*1:twitterにて、レスしてくださった。

*2:もちろん、ひとりでできる研究ではない。