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シャコ・エビ日記

シャコパンチ、エビパッチン研究者の記録

自由意志と準備電位について少しだけ

発端は、Wiredのこの記事だった。

「自由意志」は存在する(ただし、ほんの0.2秒間だけ):研究結果|WIRED.jp

 

この紹介記事は、次の論文発表が元になっている。

The point of no return in vetoing self-initiated movements

 

そして、自発行動に先行する脳活動、準備活動がらみで、RIKIKENさんと会話になった。提示された疑問は次。

 

この問題に関する会話は上のリンクから参照していただきたい。

 

さて、自由意志に関する考えはそれぞれの人の世界観に深く根差しているもので、人によってはまったくその問題に興味のないという方もいる。問題となる人には大問題で、問題とならない人にはまったく問題にならないのである。僕は前者で、なぜかこの問題にとらわれてしまっている。

 

最近、Googleのアルファ碁の活躍も含め、人工知能ブームで、さまざまな特集記事が組まれているが、その中に甘利氏のものがあった。甘利氏も自由意志の問題に興味がおありだという。甘利氏の言葉を借りて自由意志と準備電位についての簡単な導入に替えさせてもらう。

 

自由意志とは、哲学の概念や定義は難しいので、直観的に言うと、自分の行動や判断は自分の意志で自由に自発的に決めることが出来る、という当たり前のことである。その当然と考えられていたことを、ベンジャミン・リベットが実験で反証したのである。頭や心の中で「ボタンを押そう」という意志が生まれる前に、既に脳神経活動が起こっていて、ボタンを押す準備をしているというのだ。ただし、この実験結果の解釈は様々にされていて、未だに結論には至っていない。

...

「このリベットの実験結果とポストディクション仮説から、新しい人工知能のモデルを作ることができるんじゃないかと思っているのです。比較的単純な行動時の処理として意識するより前に脳が判断を下すモデルと、意識と脳が行ったり来たりして複雑な処理をするモデルを作って、組み合わせるのです。それで、このモデルを実現するには、論理的推論をベースにした人工知能研究とニューラルネットワークをベースにした人工知能研究の両方が必要だと考えていまして、これまで競い合っていた二つの人工知能研究をここで集約することが出来るのではないかと思っているのです。僕の今の興味はここなんです」

【人工知能はいま 専門家に学ぶ】(5)情報幾何学の創始者、甘利俊一氏が見るAIの世界 (4/6ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)

 

注意すべきなのは、「準備活動の起源=自由意志の起源」ではないということで、僕もそう考えている。この点が、RIKIKENさんの言う「準備電位が自由意志の本質とは思えない」ということと関連すると思う。

 

脳・神経系は電気化学プロセスで動いており、我々の心的現象もすべてそのプロセスの結果として存在している。これを元のWiredの記事のように「単なる化学プロセスなのだろうか?」と考えてはいけない。「まさに電気化学プロセス」なのである。哲学者のダニエル・デネットが指摘したように、ここで我々の自由意志をはじめ様々な心的現象がなくなってしまうわけではないし、その不安にかられる必要はない。

 

...という指摘くらいに留めておく。たくさん書いてみたいこともあるのだが、抽象度の高い概念的な考えを披露するよりは、動物と格闘して意味のある事実を見つけて発表していかねばならないので。ただ、TwitterでのRIKIKKENさんとの会話は、彼が僕の論文を読んでくれていたこともあり、とても嬉しくその嬉しさ余っての備忘的ブログ投稿でした。